Petit Disney

今日はMちゃんと旅の打ち合わせ。
朝、待ち合わせの時間を遅らせてほしいというメールを貰った。私はロイホでカレーでも食べようと思い、昼前の電車に乗ろうと家を早く出た。地元の駅の待ち部屋が暖かかったので、腰掛けて電車が来るまで座って待つ。ふと右側に目をやると『ディズニー・アート展』のチラシが。そういえば昨日地元のニュースで宣伝していたっけ。1枚手にとって眺める。

『今夏、東京都現代美術館で開催され、大好評を博した「ディズニー・アート展」が新潟で開催されることとなりました。
この”ディズニー史上最大規模のアニメーション・アート展”は、18万人もの来館者を魅了し、メディアでも多数取り上げられるなど大きな反響を呼びました。
本展では、米ウォルト・ディズニー社が誇るアニメーション関連作品資料の収蔵・リサーチ機関、アニメーション・リサーチライブラリー(ARL)が所蔵する、門外不出のコレクション約300点と、2005年に千葉大学で発見されたとの発表のあったオリジナル画のうち、丹念な修復を施した約200点の作品を一挙公開いたします。千葉大学における奇跡的なディズニーのオリジナル画発見を機に、日本初上陸の本社コレクションと、日本に眠っていた幻の千葉大学コレクションとのドラマティックなめぐり逢いが実現し、同時公開が可能となりました。ディズニー本社のスタッフとともに作品選定にあたったのは、スタジオジブリ。 お子様から大人まで、そして、ディズニーファンやアニメーションを志す学生からアートファンまで幅広い層にご満足いただけるセレクションで貴重な作品の数々をご紹介いたします。』

今日からなんだよね…いいなぁ。行きたいなぁ。でも長岡はちょっと遠いなぁ。
電車が到着する時間に近づいたので、階段を降りる。前回ロイホに行った時はカレーの種類がたくさんあったよなぁ。ってよだれを滴らしながらチラシを見ていたらMちゃんから電話。急病で家から出られないらしい。「楽しみにしていたのに」と言うMちゃん。本当に残念そう。仕方ないさ、いつ何があるか分からないものね。電話で話しながらチラシを畳み、カバンにしまう。私が勝手に早く家をでてきたんだし、「そのまま帰るよ」と電話を切ったところで、右手に切符を握っていたことに気づく。切符を買ってホームにいるんだった。たかが190円。さっき降りてきた階段を駆け上り、改札を通って無かったことにすることもできる。電車は考える時間を与えずにホームに流れ込んできた。とりあえず新潟駅まで行ってみようと乗り込んだ。ロイホでカレー食べて…それから帰ってくる?万代の方で安い服探す?…なんて考えていたらあっという間に新潟駅に着いてしまった。
階段を降りて、そして上って、改札を抜けた。いったん駅から出てロイホに行こうと歩くが、途中でUターン。
さっき手にとったチラシが脳裏にちらついたのだった。カバンの中の四つ折りに畳んだチラシをもう一度手に取る。ぼんやり今日から開催って思っていたことを、明確に今日からだと確かめた。
長岡まで、いくらだっけ。改札のところまで戻って切符売り場へ。運賃表を見て、新潟から長岡を目で追う。1,110円。どうする、心が決まらないまま時刻表を見に行く。信越本線…長岡行き…今行ったばかりだ…次は1時間後みたい…でももしかしたら別ルートでもっと早く行ける?と思って改札付近にいた駅員さんに聞くと、やはり1時間後の電車しかないとの事だった。
改札を引き返し、心は決まってないけれどおにぎりが売っていたら買ってしまおうと思った。おにぎりを買っちゃえばロイホのカレーは食べれなくなるけど、思いつきの小旅行におもいっきり乗っかれる。すぐにおにぎりは見つかり、梅とトリ五目と若菜を買った、買ってしまった。切符売り場に戻り、切符も買う。引き返せない。もう1時間後の電車に乗ることは約束されたのだ。
ホームに出て、椅子に座る。さっき買ったおにぎりを食べていたら鳩が寄ってきた。ご飯を3粒ほど指先に取り、ぴょんと飛ばすと鳩は口にくわえたが口先でモゴモゴしていた。ご飯…苦手?あげなきゃ良かったと後悔していたらカラスがバササーと現れて鳩を襲おうかとしたので、怖くなって急いでおにぎりをカバンにしまった。私の飯を取られては困る。
そうこうしてるうちに電車が来たので、乗ってボックス席に座る。人が少なかったのでさっき隠したおにぎりをカバンから取り出して食べる。旅って感じがする。

出発時刻になって電車が動き出したら急に眠気が襲ってきて、旅の景色を見ながら道中を楽しみたかったのに、眠ったり起きたりで景色を楽しむことはできなかった。ただ、起きてるモードの時、ちらりと紅葉が見られたので良かった。民家があって、焚き火の煙が空に向かってモクモクと伸びている。その奥に紅葉が始まっている小さな山々。まるでカレンダーの絵みたいな風景。
1時間半近くで長岡に着いた。実は電車の中でも眠りながら寒さに耐えていたのだが、ホームに降りたったら寒さは確実なものになり、歯がカタカタと音をたてた。駅を出て目の前のバス乗り場でバス待ち。10分くらい待っていたら来た。バスの中は電車と違って暖かかったから、すぐに体力回復。美術館にもすぐ着いて(この時時計は3時)、スムーズに移動できてて嬉しい。
着いた!

館内に入るとでっかい展覧会ロゴが出迎えてくれた。チケットを買って逸る気持ちで中に入った。

最初入った部屋はモノクロのアニメーションが放映されていた。ミッキーとミニーが単純な線で動き回っている。いきなり面白くてずっと見ていたかったけど、5時に閉館するので次の部屋に移動。
アニメーションを作るうえでのイメージの絵が飾れていて、ディズニーのタッチじゃないイラストが並ぶ。バンビのイメージイラストがやわらかいパステルカラーで描かれていて印象的だった。
次に移動したのは鉛筆でキャラクター達が描かれた絵がならぶ。いくつも描かれたダンボ。じいちゃんが昔買ってくれたぬいぐるみ。当時はミッキーじゃなくて嫌だった。こうしてスケッチを見ると可愛いな。
物語の登場人物たちがパラパラ漫画で動かせるコーナーがあって、ピノキオなんて本とリアルに人形みたいな動きをしていて感動。
途中、薄暗くて立体の木がある部屋があって、それはまるでディズニーのアニメーションの森に潜り込んだかのような感覚にさせてくれた。引き返して、もう一回くぐり抜けたかった位、すごく良かった。
背景の絵もたくさん飾られていて、桁外れに上手い。あの繊細さに愕然。木々とか、壁の模様とか、いちいち凝ってる。ディズニーで背景描く仕事をした後、画家になった人もいるそうだ。眠りの森の美女のベッドルーム、素敵だったー。
ディズニーランドのイメージ図なんて驚愕する。よくもまぁこんな細かく描いたもんだとひたすら感動。。。
写真OKのコーナーで、一人で恥ずかしいけどせっかくなので写真を係りの人に頼んで撮ってもらった。…モザイク面だと犯人みたいでせっかくのメルヘンな背景も胡散臭くなってしまう…。

オブジェ???

帰りに土産屋でグッズを眺める。後ろにいた男子が「やっぱダンボがお風呂に浸かってるやつが一番可愛かったすよ」と連れの女子に言っていたのをキャッチ。そうそう、あれ、可愛かったと思い出して探す。(ナイス!男子!)お風呂に浸かってるダンボのポストカードを無事発見し、厳選したダンボシリーズを3枚購入。
夢のような2時間だった。これを見たら「ねずみーランド」なんて言えないよ…。ディズニービデオもレンタルしてこよう。ダンボの話、詳しく知りたい。
グッズコーナーで迷った時間が多かったため、常設展を見る時間がなくなってしまった。受付に行くと係りのかたが「あと2、3分ですけど」と言う。「次回来たときも見れます」って言ってくれたけど「なかなか来ないと思う、2、3分で回ってくるので見せてください」と言って、チケットを切ってもらった。ものすっごい早歩きで飛ばし飛ばし見る。こんな見方、かなしー。

こうして美術館を後に、バス停へ向かった。バスの時刻表を見たらもう少しで来る。これを逃すともう来ない。間に合ってラッキー。待っていると少し向こうで花火が何発かあがった。あれは何の花火だったんだろう。
バス中で電話がぶるった。降りてからかけなおそうと思って着信を見たら知らない番号。パソコン教室の人だろうか (名刺作った授業でいろんな人と交換したけど登録してなかった)。
長岡駅はすぐそこ。駅のあえて一つ前の停留所で下りる。Mさんと付き合っていた時に歩いた道。演奏を見に行ったライブハウス。懐かしいな。普通に歩ける。良かった。
知らない番号にドキドキしながら電話をかけると、「長岡の電車に乗る前に所要時間ってどのくらいかかるか」とメールした友達・Rからの電話だった(Rは仕事中にもかかわらずすぐに所要時間を教えてくれた)。彼女は電話番号をメルアドと一緒に教えてくれたそうなのだが、私は登録してなかった。失礼!
Rは長岡の隣の市に住んでいるんだけど、会社が終わったので送ってくれると言うのだ。電車で1時間半かかったのを察していただくと分かるように彼女の住みかから私の家までかなりの距離。最初は遠慮していたのだが、久しぶりに話したかったし最終的にお言葉に甘えさせてもらった。駅内のボンオーハシでパンを買って数分待っているとRが来てくれた。パンとクッキーとお茶をささやかに渡して乗り込む。Rに仕事を辞めたことを今日言ったのでかなりビックリしていた。道中いろんな話をした。こんなに喋ったのは久しぶり。話に熱中しすぎて道をナビし忘れてかなりうろつかせてしまった。遠いところ送ってくれて本当に本当にありがとう(T_T)
今日は不思議で充実した日だったなぁ。Mちゃんにとって苦しい日だっただろうけど、キャンセルにならなければディズニー・アート展には行かないままだっただろうし、Rに連絡をとらなかったら寒い電車に乗って、眠ったり起きたりを繰り返しながら帰っただろう。『ロイホでカレーを食べて帰宅のコース』もいいけれど、それだと日常の中の一部で思い出として残らないはずだ。今日のことは思い出として刻まれる。楽しかった。