透明

右耳には限界があって、とっくの昔から意味のない飾りだと思っている。
イヤホンで聞くと左耳だけでは音が限られてしまう。
久しぶりにCDラジカセを引っ張り出して、部屋中いっぱいにSyrup16gを流す。
ジャケットのにじみ。涙模様のニス加工。この線を実際に引いてみようと思うなら、それはそれは結構時間がかかって面倒くさかったりする。でも出来上がった丁寧な仕事を見ると、とても満足してうっとりと眺めていられる。
それはSyrup16gに似ている。
綺麗に文字ばかりが並ぶ歌詞カード。少しだけ期待した写真。
クレジットの文字を眺める。
あ thanksの欄に、and youの文字があって少し嬉しいな。その下に… to my fatherの文字があって、せつない。
これがこれからも続くバンドであるならば、新境地?とも思える曲があったりする。ずいぶん吹っ切れたな、歌詞は相変わらず「らしい」けれど。
これで終わりだと思わなければ最後まで普通に聞けた。
どうもありがとう。最後に一枚、作ってくれて。このような終わり方のアルバムで、穏やかな気持ちです。
強がりかもしれないけれど、解散発表から少し経って終わりだと思わないようにしている。時々思ってしまうけれど…
だって私たちは五十嵐隆という人間の音楽を、まだまだ待ち望んでいるのだから。

Syrup16g

Syrup16g