wave

家電とカーテンを買いに行く。
母からお金をいただいた。
なんにもしてやれないからって
結婚式のお金を出せないからって
それでも十分な額。
お金を受け取った時は何とも言えない気持ちになった。
5時間かけて冷蔵庫、洗濯機、テレビ、炊飯器、ガスコンロを選んだ。
分厚い封筒から出したお金を使うときは胸が痛んだ。
 
部屋にあるものを手当たり次第車に乗せる作業をしているとき
なんだか分からないけど涙が出てきた。
この家を出ていくのが初めてだから。
籍が変わってしまったら、家族とお別れしてしまう。
でもそれは本当のお別れじゃないってことはよくわかってる。
でも私はこの家から出て行くんだ。
31年呼ばれた名字が、あと何カ月後かで変わってしまうんだ。
でもみんな結婚することを喜んでくれている。
でも、、なんだかさみしいよー
母もお嫁に来た時、さみしいって思ったって前行ってたことを思い出した。
私もさみしい。
母と離れたくない。
けれど
 
アパートに着くと
でっかい白い蛾がドアに貼りついていた。
払うこともできないまま、蛾を気にしながら荷物をせっせと運ぶ。
一人で運ぶ荷物はとても多く、重たい。
雨のせいか、心細い。
荷物を玄関まで運び終え、部屋まで運ぶ。
荷物を袋から出したり
昨日買ったカーテンを取り付けたりして
疲れたからごろんと横になってたらあの人が来た。
ドアに貼りついてた蛾を取り払ってくれてた。
急にさみしい気持ちが晴れた。
指輪も取りに行ってくれてて、
二人の名前が入ったキラキラの指輪がケースからお目見え。
お互いの誕生石の宝石が
相手の指輪の内側に埋め込まれている。
相手の宝石を身につけていることで、いつも一緒という意味になるらしい。
早くつけたいけれどもう少し我慢。
早くみんなに見せたいけれどもう少し我慢。
家に帰ると家族がいる光景。
当たり前だったけど
家族といられるのもあと僅か。
大事にしよう。この時間を。
指輪はうちの金庫にしまってもらった。